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第276話

とにかくあの姿を見れば、多くの男性が好きになるはずだ。

そして、目の前の弥生を見て、瑛介の母は心の中でため息をついた。

別に弥生が悪いわけではない。ただ、彼女はあまりにも強すぎるところがあり、いつも自分で物事を解決しようとする。

一方で奈々は......

同じ女性として、奈々が自分の息子に対して抱いている感情がわからないはずがない。

しかし、奈々は宮崎家にとっての恩人であるため、表面的には彼女に対して礼儀正しく接するしかない。

とはいえ、その礼儀はあくまで「恩人」としてのものでしかない。

もし奈々が弥生の地位を奪い取ろうとするのであれば、母親としては、まずそれを許すことはできないだろう。

「服装が地味すぎるかしら?」

実際、瑛介の母が帰国する前、弥生の服装は決して地味ではなかった。

彼女はもともと外見を重視しており、霧島家が破産する前は、服やアクセサリー、バッグなどは常に最新のトレンドを追い、彼女は多くのブランドのVIP顧客でもあった。毎年、特別な限定商品が贈られ、さまざまなイベントに招待されるほどだった。

しかし、霧島家が破産した後は、そんなことに時間もお金も費やせる余はなくなった。

たとえ瑛介がお金を渡してきても......。

弥生は目を伏せ、深く考え込んだ。

お金は自分の家のお金を使うのが一番安心できるものだ。彼女と瑛介はそもそも偽りの結婚であるため、彼のお金を使うことにはやはり気が引けるのだ。

とはいえ、表面上は弥生は笑顔で受け入れた。

「わかりました。何着か新しい服を買います。ありがとうございます、お母さん」

そう言って、弥生はカードを受け取った。

心の中では、離婚手続きが済んだら、このカードを瑛介に返し、彼からお母さんに返してもらおうと考えていた。

そう考えを固め、弥生は安心してカードを受け取った。

「そういえば......」

しかし、瑛介の母はお小遣いを渡しただけで話を終わらせるつもりはなかった。カードを受け取った弥生に、あの日のことについて話し始めた。

「あの日、弘次があなたを助けたの?」

その出来事を思い出して、弥生はうなずいた。「はい」

「それは良かった。彼は本当に心優しい子ね。あの日、彼はあなたの祖母が手術を受けると聞いて病院に来たんだけど、そこであなたが連れ去られるところを見たのよ」

その話を
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